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心の中では、生きている。 [人生]

2012年11月17日(土)

朝6度、雨!
この天気のように僕の頭もシンシンして、めちゃ眠たい。
睡眠不足で眠たいのではなく、禁煙の禁断症状のようである。
おまけにおなかもゆるい、めまいがする。
気力減退!

昼になっても、暗雲が垂れ込めて、暗く、雨が降り続いた。
時折、強風も加わり、木立の枝から、枯葉をもぎ取り、
空に巻き上げていた。

Kazeは谷間にあるので、風の動きは一様でない。
その複雑な動きは、薪ストーブの煙突の煙の動きで分かる。
山から吹き降ろしてくる風と谷から吹き上げる風がせめぎあっているのだ。

こんな日は、訪れる人も少ないので、僕は読書!
晴耕雨読に徹することにした。

先日、百万遍の古本市で見つけた田中勝也氏の「サンカ研究」を読む。

img003.jpg


僕は子供の頃、このサンカと呼ばれる民(九州ではカンジン)を身近に
見てきたのであるが
両親や近所の人は、彼らに近づくなと、子どもたちに言っていた。

彼らは、毎年、稲刈りが済んだ頃、やってきて、山辺に小屋を編んで住み
春になると何処かへ去っていった。
大人たちは彼らのことを「カンジン」と呼んでいた。

子ども心に「カンジン」=「乞食」というイメージを持たされていた。
が、僕は彼らが物乞いしている姿はついぞ見たことがなかった。

彼らは、籠や笊などを一杯持って、農家に売りに歩いていた。
しかもその着ているものは、男は洋服のような物で
女は粗末な和服だった。服の布は、ひざあたりまでしかないのだ。
一見して、近所の人でないことが分かるのだ。
それで、僕は彼らの生活が知りたくて
ある日、彼らの家の近くまで行ってみた。

その住居は、田んぼの広がる山際にあり、田んぼと住居の間には
小川が流れていた。
その田んぼの土手に立って、眺めた。
同じ年くらいの子どもが住居の前の川原でしゃがみこんで何かしていた。
僕に気づいた子どもが、僕に面白いもの見せてやるから来いというのだ。
で、恐る恐る川を渡って行った。

彼の言う面白いこととは、魚を取ることである。
彼は、川面を身動きもしないで、眺める、やがて突然すばやく
水の中に手を突っ込み、なんと素手で魚をつかみ取るのだ。
「お前もやってみろ」とコツを教えてくれるのであるが
一匹も取ることが出来なかった。

それから、住居の中も少し見せてくれた。
岩穴のようになった崖に竹を柱にして、葦のようなものを編んだ囲いが
してあるだけの住居の中は、薄暗く、
中央に囲炉裏のようなものがあり、上からつるした竹にやかんをかけ
囲炉裏の中央につるしてあった。

僕はキョロキョロしていると、まもなく、彼が親が帰ってくるので
お前は帰れというので、帰ることにした。
外は、木枯らしが吹き、夕闇が迫っていた。
あぜ道を走って帰った。

彼らとの出会いは、たったそれだけだった。
僕は、彼ら親子が夜、電灯もない、暗く何もないあの住居で
暖炉を囲み、楽しそうに語り合う姿がリアルに想像できて
温かな家族がうらやましく思えたのだ。

あの頃から、人の幸せは、金や物ではなく、家族の愛だと思っていた。
なぜかこの年になっても、忘れられない記憶である。

日本にサンカとか、カンジンとか呼ばれる漂白の民がいたことを
僕は信じるし、彼らが犯罪者集団や不貞の輩ではなく、農業用品等の
手工業で生業をしている善意の人々だと信じて疑わないのだ。

今では、サンカと呼ばれる人たちは、消滅したという。
でも、僕の心の中では、生きている!

 


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コメント 2

gigipapa

サンカという人々が居たという話。。。
大江健三郎さんの小説「我らの狂気を生き延びる道を教えよ」
だったと思うのですが^^;読んだように記憶しています。
実際にお会いになったんですね。。。
その後。。。どのように暮らされてたのでしょうね?!
by gigipapa (2012-11-20 22:39) 

kazenotomo

gigipapaさんへ
本当にあのときの子どもは、今も何処かで生きてるのだろうか?
きっと生きてると思う。
会えるものなら会いたい。
五木寛之さんが「風の王国」で
宮崎駿さんが「もののけ姫」で
それぞれサンカを取り上げていますね。
by kazenotomo (2012-11-21 02:00) 

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